2006年
ーーー6/6ーーー アクセス分析
このホームページには、アクセスカウンタを表示していない。アクセス数が少ないとがっかりするからという消極的な理由で、開設当初に設置しないことに決めたからである。その後年月が経って、設置することを考えたこともあったが、途中から設置するとしばらくの間は低い数値になり、初めての来訪者に対するイメージが悪いと考え、やはり設置しなかった。
最近になって、アクセス分析なるサービスがあることを知った。プロバイダに申し込むと、月に150円程度の金額で、アクセスの状況をこと細かに分析して見せてくれるのである。
どんなことを分析してくれるのかと言うと、
1. アクセス数
2. リンク元URL
3. 接続元ドメイン
4. OS
5. ブラウザ
6. 訪問回数
7. 訪問間隔
8. アクセスログ一覧
などについて、日ごと、月ごと、過去の全て、に渡りデータが提示される。それが、私のホームページ全体のうち、指定した5つのページに関して実施されるのである。
アクセス数については、同じ人が何度もアクセスすることもありうるので、それを識別できるようにもなっている。
そのアクセス分析のサービスに申し込んだのが4月下旬。ホームページの画面上には表示されていないが、着々とアクセス数がカウントされている。
ちなみにこの5月のアクセス数は、
A. トップページ 678
B. 「どんなものを」のページ 316
C. 「木と木工のお話」のページ 196
D. 「自己紹介」のページ 100
E. 「週刊マルタケ雑記」のページ 216
であった。ものの本によると、一日の平均アクセス数が20件以上であれば、個人が普通にやっているホームページとしては良い方だとのことであるから、まあまあの成績と言えるだろうか。
アクセス分析と言っても、アクセスした個人が特定できるわけではない(少なくとも私が使っているサービスでは)。しかし、実際にいろいろなデータがぞろぞろと出て来ると、何だかうす気味悪い感じがする。別に悪いことをしているわけではないが、見知らぬ他人の秘密を覗いたような、妙な気持ちにもさせられる。
ともあれ、データを数値で掴むということは、インパクトがある。元気づけられることもあり、またがっかりさせられることもある。
「どんなものを」のページへのアクセスは、一回限りの人が圧倒的に多い。一方「週刊マルタケ雑記」のページは、1ケ月の間に何回も見に来る人が多い。唯一定期的に更新しているページである「マルタケ雑記」の読者に、リピーターが多いということは嬉しい限りだ。しかし、他のページにもリピーターが現れるようにしたいものだと欲が出る。
このサービスを上手く活用すれば、より多くの人に見てもらえるサイトになるかも知れない。しかし、先程触れたものの本には、「アクセス分析はあまり深刻に捉えない方が良い」と書いてあった。
ーーー6/13ーーー ワゴン車で材木乾燥
この写真は、ワゴン車に材木を積んでどこかへ届けようとするシーンではない。ワゴン車を使って材木を乾燥させようとする試みである。
ワゴン車は家内がパート仕事の通勤に使っている。そのため、昼間はショッピングセンターの駐車場に置いてあり、天気の良い日は炎天下にさらされる。車内の温度はかなり高くなる。その温度を利用して、材木を乾燥させようというわけである。
材は、アームチェア93とSSチェアの脚に使うべく、角材に加工してある。このように細い部材にしておけば、乾燥し易くなるからだ。それらの角材を、桟木を間に挟んで並び重ねる。桟木には一定間隔で、角材の寸法に合わせた欠き込みが施されている。車が走行している間、曲がり角や発進、停車の際に角材の山が崩れることを防ぐためである。
はたして効果のほどはどうだったか。それが絶大なのである。車に入れる前は17パーセントだった含水率が、2週間で11パーセントまで落ちたのである。もしこの方法を取らずに、通常のやり方、すなわち大気中に放置するだけにしたら、ここまで下がるのに半年では済まないだろう。
この材の元となった板を丸太から製材したのが昨年の5月。含水率測定の記録を見ると、8月は37パーセント、9月は25パーセント、10月は20パーセント、11月は18パーセント、そして今年の4月は17パーセントであった。つまり、20パーセントくらいまで下がると、それから先は急激に乾燥のペースが落ちるのである。今回のような、いわば強制的な方法を取らなければ、乾燥は進まない。
この実験の成果をふまえ、この夏はせっせと部材の木取りをし、ワゴン車の中で乾かすことにしよう。材木が工房とショッピングセンターの間で無用の往復を繰り返すのは、多少のガソリンの無駄ではあるが。
ゆくゆくは、敷地内の日当たりの良いところに小さなサンルームでも建てて、それを乾燥室に使えば良いかも知れない。
このような検証ができるのも、優れた含水率計を手に入れたおかげである(マルタケ雑記2005年8月号参照)。この含水率計をフランスで購入し、持ち帰ってくれた友人のS氏に改めて感謝しよう。
ーーー6/20ーーー 詐欺まがいの木工家
日常的にマスコミに登場するものの一つに、詐欺まがいの商法がある。これが、手作り木工家具などというのんびりとしたジャンルにも、案外存在しているのである。
ある木工品のショップで聞いた話。
その男、年齢は50歳前後。自称木工家具作家。ショップに来て、こんなことを言った。「私は骨董品の蒐集が趣味です。様々な骨董品を見るうちに、時を越えて美しくあり続ける物に共通する、ある事に気が付きました。それは素材の良さです。それに気が付いて以来、私は品質の優れた材木だけを使うようになりました。一本の丸太から取れる材木のうち、本当に良い部分は僅かしかありません。その最高の部分だけを使うのです。それが全体の一割だとすると、残りの九割は使いません。捨てるか、薪にして燃やします。それくらいのことをしなければ、後世に残る作品は作れません。私の作品の値段が高いと言う人がいますが、このように贅沢な材木の使い方をしているから当然なのです」
こんなビジネストークを真に受けて信じ込み、「これは本物だ」などと感激して、法外な金額を支払って買う人が後を断たないそうである。
作品を見た。たしかに材料は「良い所取り」で揃えてある。しかし加工や意匠の点では、客観的に見て多少の難があった。後世に残るような作品と言えるかどうか。ともかく値段は高かった。
さて、この木工家のおかしい点は、場合分けをして考えると明確になる。
まず、こういう事を言ってはいるが、実際はそんなことをしていない場合。つまり、「良い所取り」はしているが、残りの木材もちゃっかりと使っているケース。
これは木工家としては普通だが、「うそ、大げさ、紛らわしい」話で客をその気にさせ、高値で商品を売りつけるという点で詐欺に近い。
もう一つは、実際にこのようなやり方で仕事をしている場合。これは木工家としてまともな姿勢とは言い難い。
昔から適材適所という言葉があるとおり、自然素材である木材を使うに当たっての最重要課題は、それぞれの材の性質を読み取り、それを工夫して生かすことである。「良い」ところだけを使って残りは捨てるなどというのは、人間の自然に対する傲慢さの現れとしか言いようがない。木を扱うことを生業とする木工家が、そのような無駄使いを吹聴するとはなんたることか。
その男は、でたらめ話での荒稼ぎにとどまらず、他者の営業妨害もするらしい。ショップの経営者に向かって、他の作家の作品は下らない代物ばかりだから扱うのを止めなさいとアドバイスしたとか。下らない理由は、「材が良く無い」からだと。正体見えたというべきか。
木工というジャンルは、真面目に取り組んで、ある程度の経験を積めば、そこそこきちんとした品物が作れるようになると思う。となると、ビジネスとして同業他者から抜きん出て稼ぐためには、技術とかデザインなどとは別の、何か絶対的なもので差をつけねばならない。くだんの男はそう考えたのだろう。そして行き着いたのが「素材」だったというわけだ。木という素材は、人が自由勝手に作り出せるものではない。それが故に貴重であり価値があるという、誰にでも分かり易い概念を基本に据え、それに詐欺まがいの粉飾を加え、一つのビジネス手法を構築したのだ。
私の回りにいる木工家たちは、おしなべて真面目で地味、そして金儲けに縁が無い。それでも自分の作品として誇れるものを目指して、日々努力を重ねている。そのような連中を見てきた目には、この詐欺まがいの商法は、同業者として驚愕であり幻滅である。
もっともその男に言わせれば「商売の感覚の鈍い奴が、負け犬の遠吠えをしている」となるのだろうが。
世の中には、下請けの木工家に作らせた品物を自分の名前で販売して、「工芸家」になりすましているニセ木工家もいる。そんな輩が本まで出して、若い女性などの人気を博しているのだから、まあ木工の世界にもいろんな人がおりますな。
ーーー6/27ーーー A4サイズの小箱
以前このコーナーで紹介した小箱。あるお客様からA4サイズで三個作ってくれと依頼があった。三つの箱を別々の材でという注文である。箱に入れた書類の分類が、一見して分かるようにとの趣旨であった。細かいことは考えずに、内のり寸法だけを大きくした。つまり板の厚さや、手かけの切り欠き部分の寸法は変えずに、全体のサイズアップをしたのである。
こういう「横滑り的デザイン」は安直だとの自戒もある。しかし、この手の品物の価格は一定レベル(低いレベル)にせざるをえないので、設計に手間と時間をかけ過ぎるのは具合が悪い。量産を想定した定番品の、周到に計画されたデザインと加工法を、言わば流用して違うサイズのものを作るというのも、一つの対応策なのである。
オリジナルの小箱の寸法は、「見た目の可愛らしさ、整った形のバランス」を狙って決めた。また、「邪魔にならない大きさの小箱を、身近に置いて楽しんでいただきたい」というコンセプトでサイズを決めた。
今回の箱は、用紙サイズとして現在最も一般的に使われているA4サイズを入れるものである。ある意味で、実用面を優先した品物である。寸法の比率は、おのずと収納物の大きさで決まって来る。A4の用紙が入り、しかも取り出し易くするための最低限の余裕を持たせた。
さて、品物が出来上がってみたらどうだったか。
私の印象としては、やはりオリジナル版の方が美しいプロポーションだと感じた。しかし家人は拡大版の方が素敵だと述べた。人によって感じ方は違うものだと、改めて考えさせられた。もっとも私の印象は、オリジナル版への当初の思い入れが影響しているのかも知れない。制作者としての思い入れ、こだわりが、却って判断の目を曇らせることもある。
ただ客観的に見て一つひっかかるのは、無垢の板をリバーシブルで蓋に使うというアイデアが、A4サイズという大きさでもなお妥当かということ。実際に使ってみて、それが問題となるかどうか。お客様へ納めるものと同じサイズで作った試用品で検証してみよう。
ちなみに写真の箱の材種は、手前からホオノキ、クルミ、クリ。材の表情の違いがくっきりと際立って美しい。またそれぞれの個性の持ち味が、楽しい雰囲気を醸し出す。このような注文をされる方の、趣味の良さが伺われる。
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